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Can't say yet!




 穢れた魔物の蔓延りしダンジョンの奥深く。重厚な鎧の騎士は聖なる光で切っ先を払い、コケティッシュな南瓜頭や牙を向く蝙蝠を散らしてゆく。
 その背後で。
 唄うように紡ぐ呪文は耳良く、静謐な響きさえ。請いと共にひかりさす破魔の五紡が大地に刻まれ、聖なる不可侵域――サンクチュアリ――に重ね、重奏なる讃美か、渡る恩恵の旋律。退魔の光柱は闇に巣食うけものたちを灼き、嘆きの悲鳴へと浄化せす。
 無形の闇の馬は嘶きを残して無へ還り、墓から甦った腐った死体はあっさりと土になる。聖なる光の余韻の残るその中で、術を行使したその主は薄く笑みながら聖騎士へと振り返った。
「終わった」
 砂利に混じる闇のけものたちの残滓。それをてのひらに掬い上げて光の中で眸を細める聖職者の様子はとても淡くて、騎士は云とも返せぬ侭に、ダンジョンに散り落ちた銀色の蹄を拾い上げた――。


 ペアでの狩りを終えたワンシーン。知友のブラックスミスに狩りの清算を押しつけて、ギルドのたまり場でのひといき。
 唐突に、それは隣に腰を据える連れの口から飛び出した。
「お前は、綺麗だな」
「ハ?」
 自分でも実に素っ頓狂な声を出してしまった、と判る。ぴちちち、とどこかで小鳥が囀る声が聞こえて、一瞬空耳かとも思ったが違うらしい。
 退魔を主として鍛錬を積んだ聖職者である彼は頸を今一度傾いで、目の前の武骨な指をした鎧姿の銀髪――先程はケインとヘルムを着けていた――がその己の顎を摺りながら、至極真面目な顔で言った。
 ――何を言ってるんだ、こいつは。
 そんな訝しみを籠めた視線を聖職者が向けると、騎士は破顔して笑う。男が余りに子供のように無邪気に笑うものだから、聖職者は眉を寄せて長身の彼を睨み上げた。
「誉めているのに、そう睨むな」
「オレが突拍子もない話をへらへら受け入れるように見えるかい」
「……失敬」
 くく、と喉を揺らして笑いながら騎士は胸許からシガレットケースを取出し、八重歯でフィルタを挟み込んで樹へともたれる。
「綺麗だと思っただけだ」
「だから何が」
「お前が」
「ハア?」
 思わず耳を疑う。重ねて聞き帰すも、聞き間違いでは無いらしい。普段冗談を滅多に言わないその騎士だからこそ不思議で、聖職者は当惑しながら眉間に皺。けれどもそれを気にせずに騎士は笑っているのだ。
 そんな様子を不思議に思ったのか、ギルドのブラックスミスが頸を傾げながらアイテムを清算した貨幣やらを引き渡す。聖騎士がくつくつと笑い、聖職者はそれとは逆に怒った様な表情をしているから当たり前と言えば当たり前の話。けれど状況が判らないのは聖職者も又同じで。
「君訳わかンないんだけど」
「綺麗だから」
 騎士の言葉に黙り込み、聖職者はぺたぺたと己の頬に触れる。それから頸を傾げ、更には眉根を寄せながら、頬を抓ったり、はたまたぺちりとはたいてみたり。そんなほのぼのしい行動を眺めながら、聖騎士は肩を揺らして笑いを堪える。
「理解出来ない」
「判らなくても、俺は判ってる」
 ――綺麗だと思う。そう騎士が睦言を呟く声音などではなく、あっさりと、きっぱりと言い切るものだから。

「……同じ事しか言えないのか君はッ!」
 煙草の灰が弓なりにしなる頃。
 同じ事しか繰り返さない騎士に痺れを切らした聖職者が怒鳴って転移の術でどこかへ飛び去ったのと、ブラックスミスが腹を抱えて笑い出したのはほぼ同時。
「ッくははは! お前好い加減言えば良いのに!」
「……何を」
「綺麗、だから好――」
「黙れ製造」
 だむと音を起てて石畳が揺れて、ブラックスミスは笑い声を堪えながら肩を竦める。くわばらくわばら、と茶化すように言いながらカートを引いて去ってゆく背中を眺めながら、聖騎士たる彼は小さく息を吐いて煙草の灰を落とした。

「……綺麗なんだ」
 呟きは、思い人へと届くわけもなく。
 はあと溜息を漏らして騎士は眼裏へ残された情景を思い、肩を落とした。

 エンドレス・ループ。
 不毛なることばともどかしいまでの関係は、暫らく尽きそうにもない。




End?









>Can't say yet!>未だ言えない

 タイトル和訳英訳まんまだろ、なんて突っ込みは未実装です。
 と言う事で久々更新はクルセプリとなりました。以前日記に書いてたやつですNe!

 Meは凄い綺麗だと思います。そんなMEさんに惚れてるクルセ。かっこつけてるけど実はへたれ。そしてMEさんは気付かないニブさ(!) そんなもどかしい二人をお送り致しました。ここまで読んで頂きありがとうございます!


 2005/1017 sawakei