――問い掛けは、笑い声。




「死ぬってどんな感じ」
 茫とした声で、そう高くない天井をベッドに寝そべり見上げながら、男は言った。その纏う法衣はダークトーンを基調とした僧人のものであり、今は乱雑に乱されている。男の鮮やかな真紅の髪がシーツに流れ、まるで華が散るかのように映る。
 その傍らに腰掛ける男は、垂れる銀糸の間から覗く碧の双眸を細めながら呟き返した。
「私より君の方が良く知ってるだろう。退魔をするなら」
 銀髪は男の法衣を見遣りながら笑い、己のローヴの裾を摘んで見せる。細かな刺繍の縫い取られたそれは所謂魔力を操るもののそれであり、法僧とは得てして違うものである。
 その手には古代文字で彩られた分厚い魔導書。羅列は意味を為し魔力を導く為のものであり、退魔ではなく、あくまで排除する術だ。聖職者の持つ法力とは違い、対象へ死を直接叩き付ける。其の分刃で屠るとか、そういうものとは違い、実感が薄い。……と彼は云う。肉が焦げ脂が焼けるにおいがしようとも、それは獣と何ら変わらない。
 尤も、といえるかは判らない、けれど彼にとっては十分なその理屈に赤毛は眉間に皺を寄せて不機嫌な面持ちになる。
「……私は判らない。生きていないから」
 屁理屈をごねるように言う赤毛に、銀髪は溜息を洩らしながら浅く笑った。
「なら私も判らない。死んでいないから」
 あっさりとしたその切り替えしに、まるで拗ねるような声を赤毛は上げる。そんな子供染みた様子の彼をくつくつと頏を揺らして笑えば、銀髪の男はベッドを軋ませながら手をついて、不貞腐れたかに見える彼の口唇に軽く口吻けた。
「……何してる」
「御機嫌取り以外の何に見える」
 未だ不機嫌な赤毛の彼の眸は眇められ、けれど、拒絶はしない。
 ベッドの縁に手を着いて、ちゅ、ちゅ、と甘い音を起てながら口唇、頬、頏許、と辿りゆけば、鬱血した紅い痕へも行き着いて。銀髪はそれを舌先で嬲るように嘗め上げながら、捲れた法衣を更に割り開いた。その戯れるような行為を甘受する赤毛は、矢張り茫とした儘に緩く息を吐き出す。僅かに甘さも混じる事から、少なくとも熱は感じているのだと、銀髪は理解している。
 長めの銀髪が頬に垂れ、擽るような感触を与えれば、赤毛は眸を細めて弛く笑う。
「……死んで観れば判るかな」
 ダラりと寝そべった儘の赤毛の唐突な言葉に、白い肌へ舌先を這わせていた銀髪は素直に饐せた。
 上辺にこそは出さぬものの豪く慌てて相手を見遣って観ると、彼は茫洋とした、その限りなく紅に近いダークブラウンの眸を細めて笑んでいる。その色に冗談偽りなどは欠片も見えないし、それなのに、どこか虚言のように薄っぺらい。――けれど彼なら遣り兼ねない、と銀髪は、どこか遠く笑った。
 きっと、彼が最期を択ぶのならば己は止められやしない。彼ならば談笑している最中でも、死を望むのならば自身で笑って喉を掻き切るだろう。それを実に理解している銀髪は、ハ、と半ば諦めたように笑う。
「死ぬ程イかせて魅せるから、私の前でそれを試すのは御免被りたい」
 冗談雑じりに返した台詞には矢張り本気の色も含められていて、赤毛はそれに声を上げてからからと笑い返した。
「イケる処迄行ってみたいもんだね。喩えば腹上死」
「まさか。野郎と情死なんて、死んでも死に切れませんよ」
 お互い牽制球を投げ合うような距離で笑いながら、着かず離れずを繰り返す。
 赤毛は艶を帯びた口唇を弧の形に吊り上げて、銀髪のそれを軽く舌先で嘗め取り挑発的に笑む。熱を帯始める舌を追うように口吻けて絡め合えば、直ぐに揺らぐ情景。熱を探り、意識を飛ばし、すべてを真白に染める瞬間。何もかもを考えさせぬような行為の交し合いは、徐々に深まっていって。

 甘い吐息が笑い声に雑じり始める頃、二人は幾度目かの悦楽へと沈んだ。


















>>?


 wizプリです。当サイトではマトモなプリ受けは初めてじゃないでしょうか。
 寧ろwizプリwizと云いますか、精神的に病んでる話が書きたくて、プリが大変躁鬱気味です。言葉同士のかけあいを楽しんで頂ければ、何よりで御座います。
 受けと云うか、受け入れるだけと云うか。えろえろ。


 実のところオリジナルストーリー持ちのキャラクターな訳ですが、それは又の機会に。日記でつらつら書いてます、名前は何れ明かされるんでないかと(…)
 一応wizさんの名前も在りますヨー。


 2005/08/30 さわ