I lost way, you lost me? あまりにも愚かで、あまりにも下賤。何故気付かなかったのか、何故気付けなかったのか。気付くには遅過ぎて、忘れるには早過ぎる、深過ぎる。すべてが届かなくなってから、気付いた。抱くのは憎しみか、哀しみか。あまりにも真白な想いがそうさせた、どうしようもなかった。我侭な思考が狂ったように泣いている。 逃げられない狂気。否、……狂喜? 桃色の雪が君のいない景色に溢れて狂い咲く。あの時確かに感じた熱はもう殺められた過去のもの。 失うことが怖かった。亡くすことが怖かった。力なく崩れ落ちるからだ、あたたかみを失ってゆくてのひら、白く蒼くぬけてゆくはだ。眼裏に浮かぶ幻想を恐れて、仕方なかった。 死を恐れたことなんてひとつもなかったのに、失くすことが怖くて、痛くて。それはある意味初めての生への執着で、失いたくなければ護れば良かったのに。 護ることなんて知らなかった。 他のものの手で殺められるくらいなら、せめて我が手で。 「春が着たら又此処で逢おう」 春は君には来なかった。 薄紅の花吹雪、振り返っても君はいない。 「過ちは償える」 償うべき過ちは降り続け、罪は消えずに澱んでゆく。 重ねた罪は手を穢していって、それは何よりの罰になり。 「――わたしはあなたを、」 終焉の笑みは何を意味するのか。 簡単に動かなくなったからだ。徐々に失われてゆく熱。すべてがなくなって、消えていって、それなのに、想いだけは残って。 死を恐れて泣けば良かったのに。裏切りを、すべてを罵れば良かったのに。――ああ、どうして君は笑ったの。いつものようにあたたかな笑みは何よりも痛くて、苦くて。置いてきた筈の感情が嘲笑うように責め立てて、すべてが判らなくなった。 時が経っても判らない。君がいなくなって、消えてしまっても、判らない。 名も無い墓標が並ぶ中、ロザリオの掛かる石碑。 君の眠る静かな遺碑を木漏れ日が射し、鈍くかがやく。 君のいない空、君のいない風。 失くしたものは、もう還らない。どこで失くしてしまったのか、どこで壊してしまったのか。 嗚呼、愚かな狂気、知る由も無い。 fin >置いてきたもの>Lost child まいご。ちゃっかりアサプリ(♂♀←ぶっちゃけ男女でも百合でも薔薇でもどれでもいい)で御座居ます。 暗殺者と聖職者がおりました。 二人は殺し合いなど、そんな殺伐とした世界とはちがう中、仲良く(?)していたのですが、あるとき暗殺者はその聖職者を殺さなくてはならなくなりました。自分が殺さなければ、他の仲間が聖職者を殺します。ならば、せめて自分の手で。――そんなおはなし。 失う迄気付けなかった想い。 置いてきたのは何でしょう。 因みに頁タイトル文はELTのキヲク。懐めろ(というほど古くもない) 2005/0502 sawakei |